秘境 トムラウシ

2022年11月20日

新得町から屈足の街を過ぎ、十勝川を遡って岩松ダム十勝ダムまで行くと、人里離れた山奥に来た感があります。その先はトムラウシと呼ばれる広大なエリアです。トムラウシは、大観光地となっても不思議のない素晴らしい自然があるのですが、手つかずのままひっそりと佇んでいます。

そんな謎も多いトムラウシについて紹介します。

1.東大雪湖周辺

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東大雪湖にかかる橋

トムラウシの入り口に東大雪湖がありますが、これは十勝ダムを造ってできた人造湖です。周辺はちょっとした峡谷になっており、ダムに適した地形です。そこに、岩松ダム十勝ダムが造られました。

しかし、ダムができる前は、ここに森林鉄道が通っていました。その森林鉄道は、十勝川の最上流部トムラウシ川流域まで続いていました。十勝岳連峰の麓にあるトノカリウシュベツ川のような、殆ど人が入らない山奥にまで軌道があったなんて信じられません。

そして、十勝ダム周辺の崩れやすい峡谷に軌道が通っていました。それはとても危険であり、通る時に念仏を唱えて渡ったことから念仏峠と呼ばれていました。昔の人のフロンティア精神には脱帽するばかりです。

2.屈足トムラウシ(ニペソツ地区)

地図は地図アプリ「日本周遊マップ」より

東大雪湖を過ぎてしばらくすると、地形は穏やかになります。そして上岩松ダム周辺に屈足トムラウシの集落があります。そこは新得の街から離れた場所であるにも関わらず、なんと小中学校まであります(投稿時点)。ここは自然の中での生活を夢見た移住者や、親子山村留学制度でやってきた人が集まる、これからの時代のモデルとなるような集落です。

集落の中心に、山の交流館とむらがあります。ここは、トムラウシ地区唯一のドライブイン的な存在です。また、貸し切りのコテージもあり、週末を都会から離れてゆっくり過ごすのに最適です。

2.曙橋

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地図は地図アプリ「日本周遊マップ」より

最終農家を過ぎてしばらく進むと、トムラウシ川を渡る曙橋に着きます。ここは、十勝川最上流トムラウシ川ヌプントムラウシ川へ向かう道に分かれる分岐点です。これほど劇的に分岐する場所って、そうはないと思います。

まっすぐ進めばトムラウシ温泉へ向かう道で、橋を渡る直前に右に林道へ入るとヌプントムラウシ温泉へ向かう道です。また、橋を渡った直後に左に進むと、十勝川の最上流、シイ十勝川沿いの林道になります。

ヌプントムラウシ温泉への道は崩落しており、復旧の目途はありません。

3.トムラウシ温泉

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曙橋を渡ってしばらくすると、道は谷や山肌を曲がりくねって進みます。そして温泉手前5kmで舗装も切れてダートになり、ダート走行の経験がない人には緊張を強いられるでしょう。トムラウシ温泉までは思うよりも時間が掛かります。途中に白雲台展望台があるので、一休みすると良いでしょう。

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道がユウトムラウシ川へ下っていくと、トムラウシ温泉も近いです。ユウトムラウシ川を渡ってトムラウシ温泉の一軒宿、東大雪荘へ進みます。すると、左側に温泉の湯畑があります。中には噴泉塔もあり、これぞ天然温泉といった感じです。できれば、この場所に露天風呂があれば、私の温泉ランキングでもトップクラスに躍り出るのですが。

東大雪荘は立派な施設で、このような山の中でも不自由がありません。車で来るのが大変だという人は、トムラウシ温泉を往復するバスが季節運航されますから、利用されてはいかがでしょうか。

トムラウシ温泉からユウトムラウシ川を遡ると、トムラウシ自然休養林野営場があります。

4.シイ十勝川

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地図は地図アプリ「日本周遊マップ」より

シイ十勝川は、十勝川最上流部の本流です。このエリアは観光地化されていません温泉もあることはあるのですが、手軽に行ける場所にありません。またが多いのですが、秘奥の滝以外は簡単には見れません。その秘奥の滝も幾度と災害で行けなくなり、今も自己責任で見る必要があるようです。

出典:youtube sky drive Hokkaidoチャンネルより

私は昔、釣りで良く訪れた場所です。思ったよりも峡谷は深くありません。十勝岳が噴火した時の堆積物により、斜面がなだらかなせいもあるでしょう。私が釣りで見つけた温泉(ぬるくて量が少ない)※は、一度もメディアで見たことがありません。いずれ再訪したいですが、知られていない名所が眠っています。

※湯の滝温泉ではありません。

十勝岳連峰が近いのですが、登山道は十勝岳へ向けての1本だけです。オプタテシケ山への登山道があれば、近くて良いのですが、これからの時代に登山道の開設はないでしょう。十勝岳新得コースは、富良野側よりも距離が長くてベテラン向きです。

5.ヌプントムラウシ温泉

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出典:Wikimedia Commons ※今は壊れています

ヌプントムラウシ川上流にあるヌプントムラウシ温泉には、湯舟がありました。また、温泉の少し前には休憩小屋(ヌプン小屋)までありました(建物は今もあります)。しかし、度重なる自然災害でヌプン峠周辺の林道が崩壊し、復旧の目途が立たない状態です。

ヌプントムラウシ温泉は、100度近い湯温があり、噴気孔がありました。それは今も健在のようですが、お湯を引くパイプ?や湯舟が破壊されてしまい、入浴できない状態です。歩いて行くにも、ヌプン峠付近でヌプントムラウシ川に降りて渡渉が必要です。付近はヒグマの巣なので、安易に近寄らない方が良いでしょう。

ヌプントムラウシ温泉の先に沼の原への登山口があるのですが、ここもほぼ廃道状態です。昔だったらすぐ復旧となったのでしょうが、予算のなくなった今では復旧が難しいですね。

6.トムラウシ山

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トムラウシ山は、十勝の最高峰(2,141m)で日本百名山に選ばれている山です。その孤高に満ちた姿は、どの場所から見ても素晴らしいです。

トムラウシ山大雪山国立公園の中央部で奥深い場所にあるため、登山をするのも大変です。登山路に危険な場所はないのですが、とにかく山頂までが遠いのです。そのため、以前はトムラウシ温泉が登山口でしたが、先のカムイ天井と呼ばれる場所付近に登山口が設けられました。それでも一般的な体力の登山者では日帰りがぎりぎりです。

日帰り登山だと忙しくて周りを十分に楽しめません。できれば、ヒサゴ沼南沼で一泊が望ましいです。テント装備が必要になってしまいますが、高山植物などを十分に楽しめるのでおすすめです。

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7.もっと利用が進んで欲しい!

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霞ノ滝

日本周遊マップver 2.752において、トムラウシにある野湯、東大雪地獄谷西沢温泉函沢温泉を加えました。これらは一般の人は行くことができません。行くとすれば万全の装備で、きちんと入林許可を取って登山計画書を提出しないと行けません。このような豊かな資源が使われずにいます。自然を保ちつつ利用できないものでしょうか。

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載っていない野湯も多い

日本地熱エネルギー世界第三位だそうですが、実際にはほとんど利用されていません。それは、地熱エネルギーを利用すると温泉街のお湯が枯渇するなどの反対が大きいためです。これは科学的に説明ができても、心理的に許さない人が多いと思います。

しかし、トムラウシであれば、トムラウシ温泉以外は利用されていません。これであれば、地熱エネルギーの利用も進められるのではないでしょうか。今こそ誰も住んでいませんが、地熱エネルギーを利用した街を作っても良いのではと思います。

また、観光で言えば、霧吹ノ滝秘奥の滝のような素晴らしい滝が観光資源として利用されていないのはもったいないです。もう少し観光施設の整備を進めて、観光客の誘致が行われて欲しいと思います。皆さんも、ぜひトムラウシの自然に触れてみてください。

※写真はスライドフィルムで結構あるはずですが、確認する時間がありません。いずれ再訪するか、スライドフィルムをスキャンしようと思います。