芽室岳 ~ 日高らしさを味わえる入門の山

2023年4月14日

登山道が少ないと言われる日高山脈にも、日帰り可能な一般登山道がいくつもあります。その中には、他の山域と同様な登山ができる登山道もあれば、同じく考えると痛い目に遭う登山道もあります。

日高山脈にある登山道の特徴としては、尾根を直登する急な道が挙げられます。北海道の山は比較的なだらかなので、初めて日高の山を登ると、その急峻さに驚きます。そのため、いきなり登るのではなく、足慣らしをすると良いでしょう。その入門として最適な山が、芽室岳です。芽室岳は、標高が1,754mの中級山岳で、登山道も、なかなか急です。

それでも、芽室岳より南にある一般登山道よりは登りやすいです。そのため、日高登山を始めるのに最適な山と言えるでしょう。

私も数多く登った山です。昔のエピソードも併せて紹介します。

1.芽室岳登山口までのアプローチ

芽室岳2
地図は地図アプリ「日本周遊マップ」より

芽室岳登山口へは、ふもとにある町営育成牧場から進みます。町営育成牧場入口にゲートがあります。閉まっている場合でも鍵は掛かっていませんので開けることができますが、必ず元通りに閉めてください。道は山へ向かって進み、舗装が切れると大きく右へ曲がります。いよいよ林道が始まります。

傍を流れる芽室川は、周辺の川と同様に2016年台風で大洪水を引き起こしました。それまでは森の中を流れていた芽室川ですが、広い氾濫原を流れるようになり、流れも随分と東寄りになったようです。昔は、林道を進んでほどなく芽室川の流れの横を道が通りました。周辺は春にエゾノリュウキンカが多く咲いていて、良く撮影に行ったものです。

林道を進んで行くと、取水施設へ向かう道がありますが(今どうなってるかはわからない)、そちらへは向かわずに本線の林道を進みます。ひたすら進んで行くと道が左に折れて、登山口に到着します。

登山口は広い広場です。ここにはかつて山小屋芽室岳があって、快適な居間とトイレが備わっていました。私は帯広から50分ほどで来れる場所なので泊まったことはありませんでしたが、遠方からの登山者にはありがたい素晴らしい山小屋でした。その山小屋芽室岳2016年台風で土砂に埋まり、掘り出されたのですが撤去されたようです。

周辺は森に囲まれていたのに、今は氾濫原の中に広場があります。まだまだ自然が回復するのには時間を要するでしょう。

2.芽室岳登山口から稜線まで

「登山ルートは、登った時のGPSログを元に作成しました」

地図を見て分かるように、登山道尾根に一直線に付けられていて急です。体力に余裕を持たせて登りましょう。

まずは芽室川を渡らなければなりません。昔は頑丈な丸太橋が架かっていて、何の苦も無く渡ることができました。ところが2016年台風で流されてしまい、今は仮の橋が付けられています。2022年の終わりに建築現場で使われる足場で橋が付けられたようですが、恒久的なものかは分かりません。

川を渡ると、一段高い尾根へ登る道になります。登り切ると針葉樹林の林になり、しばらくは緩やかな登りです。まだ芽室岳登山道の本性は現れていません。

やがて傾斜が急になると、急登の連続になります。ペースは守って登りましょう。途中、標高1,200~1,400m付近が若干緩やかです。ここで息を整えましょう。

登山道が急な部分では、足を踏ん張れずに滑ることがあります。特にブッシュで覆われていて足元が見えないところは気を遣いました。やっぱり少しはジグを切って欲しいですね。

(※以前、転倒で怪我をしてヘリコプターで救出された方もいらっしゃいました。十分に注意しましょう)

1,400m付近から稜線までは特に急ですが、足場が良くなる(階段状)ので比較的歩きやすいです。稜線に出ると、芽室岳本峰パンケヌーシ岳の分岐です。狭いですが休憩を取りましょう。

3.稜線分岐から芽室岳山頂まで

ペケレベツ岳方面を望む

分岐点はちょっとしたコブにあるので、芽室岳本峰へは一旦下ります。再び登りが始まりますが、森林限界を越えるため見晴らしが抜群です。すぐ西側にパンケヌーシ岳が聳え、ペケレベツ岳方面へ続く日高の山並みが見えます。

足元に目を移すと、キバナシャクナゲが多く咲いています。それ以外の高山植物は少なくて残念ですけれど、それを補うのに十分なキバナシャクナゲの群落があります。

ピパイロ岳や1967峰などの日高中央部を望む

そして山頂に到着です。日高山脈中央部の山々が遠くに見えます。ちょっと遠すぎるのですが、ピパイロ岳(1,917m)や1967m峰をはじめとする、日高山脈の中心部が望めます。これらの山へ登るには、芽室岳に登る技術をさらに磨く必要があります。芽室岳へ登れたことは、入り口でしかないと言うことです。

芽室岳から南へ続く稜線に、小さな池があります。そこまで登山道があったらなあと昔から思っていましたが、もう行くことはないでしょう。

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4.パンケヌーシ岳

芽室岳の西方にパンケヌーシ岳(1,746m)があります。パンケヌーシ岳は、高さこそ芽室岳に劣りますが、鋭さを持つ山容は、登山者的には芽室岳よりも上に感じます。

分岐から先は、しばらく下ります。すると、本峰へ向かう道にはなかった高山植物が現れます。ここにはチシマキンバイソウなどが咲いていて、花好きの人であれば本峰よりもパンケヌーシ岳の方が魅力的に感じるでしょう。下り切ると沢の源頭部で、ここにもアオノツガザクラなどの高山植物が咲きます。

登り返しは結構急です。時にはハイマツを掴みながら登る場合もあり、ちょっときついなと思っているとパンケヌーシ岳の山頂に到着します。ここも360度の展望が素晴らしいです。

5.日高山脈中央部の山々へ登ろう!

芽室岳7
芽室岳(左)からペケレベツ岳(右)へ連なる日高山脈

私は本州の山で登山を始めたのですが、北海道へ帰ってきて芽室岳を登ると、それまでとは違う登山になって驚きました。その時は既に3,000m峰を登っていたのですが、日高の山は原始性が高く、自然の中で登山をしている感じを強く持ちました。そして、学生の頃に眺めていた芽室岳の山頂に立った時は、本当に山頂に立つ日が来るとは思ってもいなかったので、感無量でした。

芽室岳を登ったならば、次は伏美岳(1,794m)が良いでしょう。伏美岳登山道が急ですが、山頂からは憧れのカールが見えます。そして、十勝幌尻岳(1,846m)、コイカクシュサツナイ岳(1,721m)、ペテガリ岳(1,736m)など、さらに急な登山道が待っています。

日高山脈にある登山道は、他とは一際違います。登り切った時の感動は、他と違う充実感を味わうことができるでしょう。ぜひ、日高山脈の山々を登ってみてください。