3D CADでルアー作成 ~ 試作版

釣りで使うルアーですが、1個1,000円前後はする高価な釣りアイテムです。特に魚の形をしたミノー系は、ロストが続くと釣りが楽しくなくなっちゃいます。そこで、3Dプリンターで作成できないものだろうかと考えました。調べてみると、結構3Dプリンターで作成している人がいました。

また、3Dプリンターで作成するルアーは、3D CADデータを集めたサイトで提供もされています。それらを使えば、塗装こそ必要ですが、ルアーの作成もそれほど難しいことではありません。

しかしながら、やっぱり自分の好きなように作りたい。となると、3D CADで作る必要があります。そこで、まずはテストということで、試作版を作成してみました。

※今回作成するものは試作であり、実際に使う場合を考えていません。あくまでも、ノウハウを得るための作品であることをご了承ください。

1.三面図の取得

まずはベースとなる画像を取得する必要があります。今回の作成で必要となる画像は、側面図、上面図、正面図の3つで、これらの画像を元に3次元のルアーを作成します。

最初は手書きで三面図を作成して、それを元にして画像ファイルにしようと考えていましたが、ミノー系ルアーをあまり使わない私では、うまく設計図を作成できません。

そこで、ネット上で公開されている三面図を探しましたが、あまりないというのが実情です。それでも、いくつか取得してルアーを造形してみました。

しかしながら、今回は著作権に触れたくないので、Copilotに作成してもらいました。そして、何度かのやり取りで作成してもらった図形が、上の2つの図です。一見、良くできた感じに見えますが、縮尺が微妙なのと、上面図が上と横混在で作成されたりしています。それでも、これらを使ってルアーを作成することにしました。

上図を元に、側面、上面、正面の3つの画像ファイルを作成します。

2.側面図、上面図、正面図をFreeCADに読み込ませる

それでは、FreeCADを使ってルアーを作成します。まずは、三面図をFreeCADに読み込ませます。

ここで注意ですが、細かいFreeCADの操作の説明は行いません。それらは、YouTubeなどの動画を見てマスターしてください。私はFreeCADに関しては、習得記事を作らない予定です。ご了承ください。

三面図ファイルをFreeCADにドラッグ&ドロップすることで、FreeCADへの取り込みは完了します。しかしながら、画像がX、Y、Z軸の向きに合っていません。また、今回は5cmのルアーを作成しようと思いますが、画像が5㎝に合っていません。これらは、画像のプロパティを操作することで合わせます。

側面図:YZ平面
上面図:XY平面
正面図:XZ平面

に合わせます。画像の回転やサイズ、位置変更をうまく操作して合わせてください。最終的には、上図のようになります。

3.三面図をトレースする

次にすることは、3面それぞれの画像の輪郭をトレースすることです。それぞれの面の魚の輪郭を、線でトレースします。各面ごとにsketchを作成して、その面上でトレースします。上図は側面のトレースの様子です。側面なのでYZ平面にsketchを作成して、側面画像を見ながら輪郭を線でトレースします。

トレースの線ですが、私は「ノットによるB-スプライン」を使用しました。これ以外にもトレースする方法はありますので、自分に合った方法でトレースしてください。

側面が終わったら、同様に上面、正面のトレースを行います。作成が終われば、上のような3面のワイヤーフレームが出来上がります。この3つのワイヤーフレームから立体図を作成するのですが、どうすれば良いのでしょうか。

4.Curved Shapes ワークベンチを使う

3D CADで既存図形にない曲面を描くのは大変です。そこで、拡張機能で提供されるアドオンのワークベンチを使います。今回使うのは、「Curved Shapes」ワークベンチです。ワークベンチを「Curved Shapes」に変更します。

ここで大事な操作があります。3つのワイヤーフレームを選択するのですが、最初に正面を選び、CTRLキーを押しながら他を選びます。そうしないと、うまく立体になりません。

メニューの「Curved Array」を選択します。

ツリーにCurvedArrayが作成されます。ここのItemsが最初は「4」で設定されていると思いますが、これを変えてみてください。

Itemsを「10」にしてみると、正面のワイヤーが10個に増えました。このようにCurved Shapesは、3つのワイヤーフレームから推測してアイテムを増やしてくれます。10では数が少なすぎますから、50以上にしてみましょう。数が多いほどワイヤーフレームが多く作成されますが、逆効果もあるので注意です。

Itemsがある程度決まったら、それを元に立体化します。パラメーターの「Solid」を「true」に変更します。

立体化に成功しました。ちょっと正面に平面が出来てしまいましたが、滑らかな側面を持つルアーが姿を現しました。なかなか感動ものです。

5.前後にリングを付ける

ルアーにはラインと針を付けなければなりません。しかしながら、今回は試作版ということで、本番とは異なり、前後にリングを付けるだけとします。(これから先が裏技を必要とする工程になり、解説が収まり切りません)

リングの作成には「Part」ワークベンチを使うので、変更してください。図形の「トーラス(リング)」を選択します。するとデフォルトのトーラスが作成されますので、プロパティで大きさや向き、位置を調整してください。前後にリングを作成すると、俄然ルアーっぽくなりました。今回はここまでの造形とします。

6. 3Dプリンターに造形データを渡す

エクスポートでSTL形式ファイルを作成し、3Dプリンターに渡します。私の例では、Bambu Studioにファイルを渡しています。FreeCADで作ったルアー造形が、Bambu Studioに取り込まれているのが分かります。

このまま造形するとバランスが悪くて作成失敗になるので、サポート材の設定が必要です。

でも、今回は造形しません。このルアーでは、輪の強度が不足しています。実際に釣りをしたら、輪の部分が壊れてしまうでしょう。また、どういう風に泳ぐか分かりません。そして、少なくともリップを作る必要があります。このリップを作る作業がちょっと面倒で、今回は紹介できませんでした。

7.実際の釣りで検証していきます

実際の釣りでは、強度や浮力バランス、泳ぎ方など、調整しなければならない項目が目白押しです。上図は最初にテストを予定しているプロトタイプですが、8環や鉄球を加えるなど強度やバランスを考慮しています。2026年度は、実際の川で検証してみます。皆さんも、ぜひ自作ルアーを作成して釣りをしてみてください。